夕方に早退させていただける美容室に勤務先を変え、週2回、夜間コースのヘアメイクスクールに通うことにしました。
学長は、第一線で活躍されつづけているメイクアップアーティスト。
学校には、たくさんの「作品」写真が飾られていました。
被写体はもちろん人間なのに、写真全体から伝わってくるのは、ただ「きれいな人」ということだけではない。
美しい。
楽しい。
ハッとする。
見た人の感情を動かす世界観がありました。
メイクって、こんなに奥が深いんだ。
まだまだ学ぶことがある。
私はまだ、ほんのスタート地点なんだ。
そんなことを実感しました。
この学校では、クリエーションの基本となる「色」「形」「質感」をしっかり学びました。
撮影にもチャレンジしました。
テーマを決め、友人にモデルになってもらい、プロのカメラマンに撮影してもらう。
カメラの前での立ち位置や所作まで、一つひとつ学んでいきました。
私が初めて挑戦した作品のテーマは、
「強い女性」
学んだことを全部出し切って、強い女性を表現したつもりでした。
ところが、作品を見たモデルの友人が真顔で、
「……これって、デビルマン?」
……。
ズッコケました。
そして、ちょっと落ち込みました。
どうやら私は、こういう「感覚的なもの」を表現することが、あまり得意ではないようでした。
真面目で、ゆとりのない性格。
「感性を磨くには、美術館や映画、美しい景色をたくさん見るといい」と教わり、時間があれば、そうしたものに触れるようにもなりました。
そんな学びを重ねて、学校を卒業。
そのままスクールで働かせていただくことになりました。
同時に、同じ経営者が営むヘアメイク事務所にも所属し、CMやファッションショーなどのヘアメイクに携わるようになりました。
そこで経験した仕事には、ひとつの共通点がありました。
「指定されたヘアメイクに仕上げる」
広告なら広告のイメージ。
ファッションショーなら、その世界観。
クライアントが求めるものを理解し、そこへ向かって、モデルさんやタレントさん、カメラマン、スタイリストなど、みんながそれぞれのプロとして力を発揮する。
全員でひとつのものをつくり上げていく。
そのチーム力は刺激的で、ドラマティックで。
今思えば、青春のような時間でした。
でも、そんな仕事を経験するほど、私の中に少しずつ、別の気持ちが生まれてきました。
モデルさんやタレントさんの「個性」に、私は向き合えているんだろうか。
いや。
向き合いすぎてはいけない仕事なのかもしれない。
求められているのは、その人自身がどう見えるかではなく、クライアントが求める世界観だから。
それは、仕事として当然のことです。
だからこそ、私は余計に思うようになりました。
クライアントのOKよりも、このモデルさん自身のOKをもらいたい。
カメラの前でのOKだけじゃない。
撮影が終わって、普段の生活に戻ったときにも、
「今日の私、なんかいいな」
と思ってもらえるような。
その人自身が、自分のことを少し好きになれるような。
私は、そんな仕事がしたい。
そう思うようになりました。
この頃から、私が目指している方向が、少しずつクリアになっていきました。
そして次の勤務先で、私はようやく出会います。
ずっと探していたもの。
「似合う」
という考え方に。






